海の底まで眠りたい

恋とスコーンとパンクと私

武士とチョコミント

「あーあ・・・」

やってしまった。自主休講。

せっかくの皆勤賞が。

 

「台風だもん、仕方ないよ」

大荒れの天気とは対照的に、マコは呑気に私が買い貯めておいたアイスクリームを食べている。

 

昨晩大学のホームページを確認した時には全学部休講と書いてあったのに。

しかし今朝になって私の学科だけは通常通り授業を行うと書いているではないか。

 

ホームページが更新されているのに気づいたのは始業の十分前。

大学までそこまで遠くないとは言え、遅刻は免れない。まして外は大雨だ。

 

「こんなことならトモダチの連絡先を聞いておけばよかったかなあ・・・」

そう呟きながら私は大学事務室に電話を掛けた。

 

今日の授業は何だっけ。そんなに興味はないが、今まで触れたことのない分野だったはずだ。新しい道が開けたかもしれないのに。

そんなことを考えてももう遅い。

 

別に友人がいないわけではないのだ。コミュ障でもない、と思う。

プライベートで必要以上に人と馴れ合いたくない、という変なプライドが私の交友関係を狭めていた。

 

「山野は真面目過ぎるんだよ、せっかくの休みなんだし満喫したら?みんな休んでるかもしれないよ?」

マコは二つ目のアイスに取り掛かっている。

 

「そういうもんなんかな」

「そうそう。第一今までが頑張りすぎだって。一日くらい休んだって、私も神様も怒らないよ。前みたいに体調悪くしたらどうするの?」

 

そうなのだ。頭ではわかっている。

自分が休んだって誰にも迷惑はかけていないし、少しサボるくらいが周りにとっても丁度いいくらいなのだと。

 

「大学ってもっと高い志を持った人が沢山いるんだと思ってた」

「今日はやけに素直だね。気圧の影響?」

嬉しそうに目を輝かせたマコが顔を覗き込んでくる。

思ったことが口に出ていたようだ。

 

「山野みたいに毎日一生懸命生きてる人なんてほんの一握りだよ。大学だって目的を持って入ってきている人は少ないでしょ」

 

「まあね。でもそれが私が甘えていい理由にはならない」

過ぎたことを悔やんでも仕方がない、昨日の復習でもしておこうか。読めていない小説も読んで感想を投稿しよう。私は過ぎた時間を取り返すべく残り半日の予定を立てていた。

 

 

「山野ってほんと頭固いね、武士みたい」

ケラケラ笑うマコを見て少しムッとしたが、目の前に差し出された食べかけのアイスを見て力が抜けた。たまにはこんな日もいいか。

 

 

久しぶりに食べたチョコミント味のアイスは夏の訪れを告げていた。

明日は友人たちに連絡先を聞いてこよう。絶対。