海の底まで眠りたい

恋とスコーンとパンクと私

いま、ここ

私の中にはネズミと少女が住んでいる。

 

少女の名前はマコ。

ネズミの名前は白身。

 

2人がいつから住み着いていたのかは知らないが、尋ねるといつも「あなたが生まれる前からよ」と言ってはぐらかされる。

 

マコは12歳くらいの女の子。

白身はその名の通り白ネズミだ。少し毒舌で、雑食のくせに好き嫌いが多い。

 

 

「ねえ山野、もう7月だよ」

「だから何、長袖着るなって言いたいの」

 

いつもレースのワンピースを着たマコと違って、私は夏が嫌いだ。

「山野、いつも暑苦しそうな服着てるもんね」

黒のスキニーパンツにドクターマーチンのブーツ、真夏に仕方なくTシャツは着てもこの2つは譲れない。

 

「暑苦しい服じゃなくてパンクファッションね、ポリシーなの、生き様」

「服が生き様、ねえ」

暑いもんは暑いでしょうに、と言いながらマコはくすくす笑った。

 

 「あんたもう何歳だと思ってるの?とっくに20過ぎてんだよ?」

いつの間にか散歩から帰って来ていた白身が言った。

 

「20超えてたら着ちゃダメなの?そもそもネズミなんていくつになっても毛皮「はいはい、ケンカしないの。山野も白身も仲良くして?」

 

3人の中では私が1番年上なのに(白身は何歳なのか知らないけど)仲裁するのはいつもマコだ。

素直で穏やかなマコと違って、私はいつもそっけない態度をとってしまうのだ。我ながら損な性格だな、と思う。

 

一生ブーツしか履かないのかな、そんなわけはないか。

 

窓からは夕日が差し込んでいた。私はなんとなく、押し入れにしまい込んでいたサンダルを引っ張り出した。鮮やかなオレンジ色だ。

 

「マコが履きたがるから仕方なく、ね」

 

玄関が少し明るくなった。口角がほんの少しだけ上がった。